私が子供の頃、当時暮らしていた実家では柴犬一匹を飼っていました。室内ではなく、外、細かく言えば、自宅庭に設置された犬小屋に住まわせていました。当時はまだ、飼い犬を外に放し飼いにしてもイイ社会でしたので、当時の我が家では、周囲の他の飼い犬を持つ住民同様に、飼い主が犬の首に紐を付けて散歩に連れて行かず、余程の大型犬は別としても、通常サイズの犬たちは、飼い主が外へ放てば、ひとりでに外へ出て自由に外を歩き回れるようにしていましたし、、我が家でも同様スタイルで、飼っていた柴犬を管理していました。

勿論、日頃は鍵付きの檻の様な小屋に入れ、単独では外に出られない様にはしていました。そんな愛犬の自由時間は、決まって午後5時頃からそれ以降の1時間の6時くらいまででした。まずは、夕方5時頃、母親が職場から帰宅すると、犬小屋のカギを開けて外に放ってやるのですが、賢いことに、いつもきまって放ってからの1時間ほど経った6時頃、自宅へ一人で戻って来ていました。

母親が自宅に戻って来た柴犬の姿を見ると、犬小屋のいつもの器に、味噌汁の入ったご飯をを入れてやると、お腹を空かせた柴犬は、それを食べる為に小屋に入っていきました。夢中になって食べているその隙を狙うかのように、母親は小屋のカギを締めて再び、犬をに出られないようにしていました。今はペットフードが当たり前かもしれませんが、今から40年ほど近く前の当時の我が家では、犬のエサは味噌汁掛けご飯が定番で、その柴犬もいつも喜んで食べていました。

時々母親は、肉屋さんから処分するはずだった肉の骨を貰い、それを煮出したおだしを用いて、いつもよりも豪華な餌として与えていたこともあった記憶があります。そのような、愛犬と飼い主のルーティーンは、その柴犬がある日何故か突然、我が家から姿を消すまで続いて行きました。帰らぬ愛犬の消息については、分からずじまいでしたが、今はもう天国にいる事は間違いないでしょう。そういえば、私の主人は味噌汁掛けご飯が大好きです。彼がそれを喜んで食べる姿を目にする度、子供の頃飼っていた柴犬を想ってしまいます。